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新年の抱負に代えて。恥ずかしい話だけど5年くらい前に、今年が動画元年だといってタイアップで様々な動画コンテンツを作ってみたもののコストを回収できず、やっぱりWeb記事の時代だよねと元に戻ったことがある。

ただいろんな兆候を見ていると、今度こそ動画元年になるだろう。例えば広告主と相談していると動画の話になることが昨年からとくに増えている。ただ実際には現在配信されている動画広告の多くはCM素材であり、ゼロから作るケースはまだ少ない。

冒頭の図でいえば、右下の「コンテンツなき広告」だ。手間暇かけてCMを作っているのにコンテンツがないとはどういうことだ、という声があるかもしれないが、そういう方はYoutubeの再生前に出てくる動画広告をスキップせずに見続けてほしい。

そこで「コンテンツがあるタイアップ動画をゼロからどう作るか」というのが今年の大きな課題になってくるのだけど、その前に自分でもやりがちで、気をつけておきたい事をまとめてみた。
※ちなみに左上の「広告なきコンテンツ」については後で説明したい。


■短尺を目指してはいけない

「ネットで見られるコンテンツは短尺である」といった意見がよくある。しかし過去にはケータイ小説からはじまり、やたら長いコンテンツがウケた例も数多くある。

短尺か長尺、どちらが正しいのか?正解は両方ただしく、「つまらないものは短尺でしか見られないが、おもしろければ長尺でも見る」というように二極化しているだけなのだ。これについては次の資料が有名だ。

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この傾向を私は「時間の谷」と勝手に呼んでいる。コンテンツを長くしていけばどんどん見られなくなっていくが、ある時点から見られるようになっていく。

ちなみに上記のグラフが本当なのか確かめるため、私が関わったタイアップ記事でも長文の記事を散々やってみてわかったのは、これは本当だった。ウケた記事だと平均6分、長くて10分記事を読んでいる。しかもスマホの方が長い時間読んでいることも分かった。

これが意味することは大きい。というのは、タイアップという一種の広告なのにユーザーは長時間読むし、その後に友だちにシェアもしてくれるのだ。15秒CMが典型だが従来の広告の多くは短尺だ。この時間が伸ばせるということは、新しい展開を生み出せるはずだ。

そこで、苦しいけどこの「時間の谷」をどう超えるか、というコンテンツの技術を磨く必要が出てくる。昨年よくやっていたのは、映画のストーリーの技法をWebに置き換える方法で、これによって滞在時間を大幅に伸ばすことができるようになった。

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この時間の谷は動画でも同じ現象が起こるだろう。バズる短尺の動画広告を求める声は多いし、それは良いとして懸念なのは、それが従来のCMの焼き直しに終わってしまわないかだ。そこで新しい動きである長尺の動画にあえて注目したい。


■広告を目指してはいけない

二極化といえば、私が言っていることに対する反応も二極化している。広告の未来だと言ってくれる方もいる一方、「こんなのは広告ではない」「要は面白CMですよね」と皮肉を言う人もいる。2年前にだした著書「広告なのにシェアされる コンテンツマーケティング入門」も、評価は綺麗に二つに分かれていた。

なぜそうなるかというと、反論してくる人は、あくまで「広告を作る」話だと思い込んでいるからだ。

私がやっている事は、あくまで一社提供の「番組」を作ることが目的であって、広告ではない。いわゆるスポンサードコンテンツだ。

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これは例えば、年末にやっていたタイアップ漫才が見事だった。
あくまで漫才がベースでその上に広告がのっかっており、その反対ではない。
よくある「漫才風のCM」ではなく、番組として成立するものだったのが新しい。

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広告なのか番組なのか。さきほどの話でいえば、短尺か長尺かという事だ。CMクリエイターと話すと、15秒だと広告メッセージを言うのが精一杯で、コンテンツにするなんて余裕はないですよ、という声をよく聞く。ただこれが15秒ではなく1時間でいいですよ、と言われればどうだろう。やりようはいくらでも生まれてくるはずだ。


■PVを目指してはいけない

PVに変わる指標はないのか、という話題をよく見かける。
私の考えは「インパクト」だ。例えば「そうだ京都に行こう。」という1本のCMが、その国の空気を変えることがある。そのCMでいったいどれだけの人数が京都に行ったのか、正確にはわからない。しかし確かに空気は変えた。需要を刈り取るのではなく、「リーチとクリエイティブの掛け算によるインパクト」で需要を産むのがブランド広告ならではの醍醐味だ。

これをネットで実現するには、次の二つの要素が必要だと思っている。

長い滞在時間 × 膨大なリーチ量 = インパクト

長い滞在時間とは前半の「短尺を目指してはいけない」ということ、
そしてその滞在時間を稼ぐには「広告を目指してはいけない」で話したが、
最後の「膨大なリーチ量」とは、CMに匹敵する露出量がネットでも必要だということだ。

こう思ったのは、日々バズるコンテンツを求められる中で、いくら面白くてもそもそも見られる機会がないと無力だということを痛感したからだ。これが冒頭の図で左上の「広告なきコンテンツ」だ。

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困ってしまうのは「コンテンツでバズらせて誘導すればいいから、最初の誘導はないです」というパターン。そもそも見られる機会がなければ話題になりようがない。そしてコンテンツの重要性はリーチの量に比例する。巨額の制作費でCMを作るのは、リーチ数が多いからだ。ネットでもコンテンツをベースにした広告の効果は、リーチ量に比例するはずだ。

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逆に言えば、ネットでは1記事のリーチ量が少なかったから、これまでコンテンツが軽視されてきたとも言える。

しかし最近のスマホシフトによって、このリーチ量が増え始めている。従来のウェブメディアであれば1記事1万〜5万PV誘導できて万歳だったが、例えばLINEから誘導すると、これが150万人とかになる。PVではなく人だ。

この状況で長文記事でも読まれるかも試してみたが、直近の事例では9割弱が完読していた。平均時間は6分。先ほどの式に当てはめると、次のようになる。

長い滞在時間(6分) × 多いリーチ量(150万人) = 900GTP 【Gross Time × Person】※6分間の広告を150万人に見てもらったインパクトがあった。

GTP 【Gross Time × Person】は、CMの出稿単位であるGRP 【Gross Rating Point】のパロディーだが、これに近い計測法が近く出てくるのではないか。CMの指標と大きく違うのは、滞在時間(もしくは接触時間)をコンテンツの力で延々と伸ばせる点だ。ここに大きな可能性がある。

従来のPVとCTRはどちらかと言えば販売促進に近い計測法であり、それはそれで良いとして、ブランド広告の指標は別途必要になるだろう。私が滞在時間を重視しているのは、このようにインパクトに直結すると思っているからだ。

まとめるとこうなる。

・短尺を目指してはいけない
・広告を目指してはいけない
・PVを目指してはいけない

最後に言いたいのは、

・この記事を目指してはいけない

ということだ。短尺も広告もPVもまだまだ有効だ。
この記事で書いた路線だけではメディアは続けられない。
どっちも大事!そんじゃあね〜。



※ちなみにさらに突っ込んだことを次のイベントで話します(PR)。
柳内啓司×谷口マサト×阿部広太郎「メディアあした会議 新年会 〜シェアされまくるコンテンツを解説し尽くす2時間〜」 | 本屋 B&B