岡本太郎の母、岡本かの子の名作。老いた芸妓が若い男を飼う話。私が一番好きな短編で、4コマだと伝えきれないので(笑)、ぜひ本も読んでほしい。
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老いた芸妓は冒頭で言う。
「何人男を代えてもつづまるところ、たった一人の男を求めているに過ぎないのだね。いまこうやって思い出して見て、この男、あの男と部分々々に牽かれるものの残っているところは、その求めている男の一部一部の切れはしなのだよ。だから、どれもこれも一人では永くは続かなかったのさ」

老妓が求めた男への執念は、若い男が何かに没頭していのちが輝く所を見て死にたいと思うまでにいたる。男は段々と老妓の意図に気づき、恐ろしくなってきて家出しては連れ戻されるようになる。

老妓は悲しむが、その悲しみこそが「いのち」であることにとっくに気づいている。見事に老妓は男のいのちを吸っていたのだ。

岡本太郎はかの子についてよく語っているが、恐ろしいほどのエネルギーの持ち主だったという。一見おとなしく見える老妓はかの子そのものであり、まさにその内面は悲しみを原料にして爆発して燃えているのだ。

老妓抄 (新潮文庫)
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