twitterで「@wetfootdog テレビ局はなぜハリウッドを見習って「ヤング水戸黄門」とか「水戸黄門ビギンズ」「水戸黄門:ファーストジェネレーション」などを作らなかったのか」という発言に触発されて、『ヤング水戸黄門』を書いてみた。

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『ヤング水戸黄門』

寛永24年に19歳となった水戸黄門は、あろうことか自らのインノウに桜吹雪の刺青を入れさせた。きっかけは昨年の冬、朱子学に詳しい能楽師から「論語」の真の意味を教えられたからだ。

「論語」の有名なフレーズ「吾、15にして学に志し、30にして立ち、40にして惑わず、50にして天命を知る。60にして耳にしたがい、70にして心の欲するところに従って矩をこえず」は、実は孔子でもチンコが立たなくなるという事を遠まわしに表現した話なのだという。

孔子は15〜30歳まではチンコが立っていたが、それ以降は思うように立たなくなり、40になれば立たなくても、もう戸惑うことはないありさまだった(40にして惑わず)。50にしてすっかり駄目になり(天命を知る)、60になってチンコが立たないことを笑われてもすっかり平気になっていた(耳に従う)。70になって絶世の美女と会うがやはりチンコは立たなかった(矩をこえず)。

19歳の水戸黄門は苦悩した。あの孔子でも立たなくなるくらいなら、自分もまたそうなるのであろうと。であるなら、元気なあいだにどうかこのチンコにもっと活躍してほしいと願い、桜吹雪をインノウに彫ると共にあることを決意したのだった。

徳島への旅に出たのはその年の秋だった。徳島の山奥、大歩危(おおぼけ)地帯で妖怪が旅人を襲って食べるという噂を聞いた水戸黄門は、今こそ自分のチンコを試して妖怪を退治しようと思い、俳人の「助べえ」さん、「カクカク」さんを連れて旅立ったのである。

江戸時代の大歩危は、ど田舎の徳島の中でも究極のど田舎と呼ばれる、人知が及ばぬ場所であった。山奥の道は険しく、後の世の漫画家、水木しげる氏がこの地を妖怪発祥の地と呼んだくらい、妖怪の噂が絶えなかったのである。

大歩危の一歩手前である小歩危の村に入った水戸黄門一行は寺に泊まっていた。水戸黄門と助べえさんとカクカクさんが猥談をしていると、辺りが騒がしくなり、村人達が寺に若者の遺体を運び込んできた。

村人が言うには「子泣き爺がまた出やがった。ここ3年おとなしくかったのに今年に入って3人目だ。夕方子どもが泣いているとさらいに来る。昨日木村さん家の赤ん坊がさらわれたんだが、父親が子泣き爺を追って夜山に入ったんだが行方不明になった。今日昼になってみんなで山に入ってみたらこの有様だ」と遺体を悲しげに見つめた。ちなみに現代で知られる子泣き爺は水木氏の創作で、実際の子泣き爺は上記のように幼児をさらう妖怪で善玉妖怪どころか悪そのものである。

村人達が翌日に大歩危で子泣き爺を探して山狩りをすることを聞いた水戸黄門は、その狩りに同行することにした。身分を明かさない水戸黄門の一行に村人達はいぶかしんだが、若者3人ならたいして害はないだろうと思い、同行を許した。

大歩危の山奥に水戸黄門と村人達は分け入った。いくら進んでも森は続き、朝に山に入ったのにもう日が暮れようとしていた。「あ!」1人の村人が叫んだ。目の前に浅黒い肌をした老人が笑っている。「待て!」と叫んだ村人達はいっせいに老人を追うが、以外に老人はすばやく距離が縮まらない。気づいた頃には村人と水戸黄門はさらに山奥に入っており、あたりはすっかり暗くなっている。

村人が松明に火をつけると、一同は仰天した。あたりを妖怪達に囲まれていたのである。「夜行」「山ミサキ」「川ミサキ」「柿谷橋の怪」「鬼子」といった大歩危で名に聞こえた妖怪が腕を組んで立っている。村人達はすくみ上がり、互いに身を寄せ合った。子泣き爺が叫んだ「二度と大歩危の山に入らぬなら今夜だけは許してやろう!」

村人達は涙を流しながら子泣き爺にひれふした。村人達がひれ伏すなか、水戸黄門の一行だけが立っていた。子泣き爺が「そこの3名だけは殺されたいのか!」と一喝すると、助べえさんが更に大音声で叫んだ。「まてまてまて〜い!このインノウが目に入らぬか!」

その声と同時に助べえさんとカクカクさんは、水戸黄門の袴ははぎとった。そこには見事にそそり立つ一物と共に、桜吹雪の入ったインノウが垂れ下がっていた。

「ここにおわすお方をどなたと心得る、畏れ多くも副将軍筆頭候補、水戸光圀公にあらせられるぞ、頭が高い、ひかえおろう!」

その異常な風景に、村人達は「ハハ〜!」と水戸黄門に向きなおしてひれ伏した。村人はおろか、妖怪どももお互いの顔を見合わせ、妖怪の1人、「夜行」さんは水戸黄門にひれ伏までしていた。インノウに桜吹雪をいれた狂人、水戸光圀公の噂は全国に伝わっていたのである。

「正体見たり!」と水戸黄門は叫んだ。「妖怪は人外のものゆえ、人の位は関係なきはず!それでも動揺するということは、お前たちはハリボテを着た人間であり、単なる盗賊、人さらいであろう!」

妖怪達の腰はへなへなと崩れ、村人達はいきり立った。30分後には逃げようとする妖怪をすべて捕らえ、村に引き連れてかえった。村では水戸黄門の噂で持ちきりだった。「どっちが妖怪かわからねえよ!だってインノウに桜吹雪だぜ!完璧イッちゃってるぜ!」と。

しかしそんなことを水戸黄門に直接言う村人はいるはずもなく、大歓声で水戸黄門は見送られた。「コウモンさま〜!」「インノウさま〜!」と黄色い声をあげる村娘達の声は、褒めているのはバカにしているのかわからなかった。

一方、水戸黄門はそんなことを気にする器ではなかった。吉野川を船でゆったりと下りながら、「いつの日かチンコが立たなくなれば、印籠ででも代用するしかないなあ」とシミジミと思いにふけっていた。

おわり