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この本が扱っているテーマは、エンデ自身が明言している通り、お金と利子の問題だ。物語のなかでの「時間」とは「時は金なり」というように、お金そのものを指している。

時間貯蓄銀行は、人々が現在の時間を銀行に預け、未来に貯蓄することを勧める。つまり利子がつく貯金のためにせっせと今現在働くことをすすめる。これは一見まともな事に聞こえるが、物語で人々は致死的退屈症という感情や情緒が機能しなくなる病気にかかる。これは現代で言えば、お金のために働くことでウツ病が蔓延することを予見している。

エンデが扱っているテーマは広大で、お金そのものへの懐疑だ。物語のなかで「人生で一番危険なのは、かなうはずの無い夢がかなえられた時だ」という台詞があるが、これは例えば米国のサプライムローンで、家を買えるはずの無い人までマイホームをバンバン立てていたように、実体とかけはなれた夢がかなってしまうことを指しているのかと思う。

金融工学により、お金は実体よりも大きくなるよう成長を強いられ、それがあまりにも実体とかけはなれた時、バブルが崩壊する。バブルが起こるのは、もともとお金自体がバブルな性質をもっているからだ。

エンデは、シルビオ・ゲゼルの、1ヶ月に1%価値が減る「自由貨幣」の理論とルドルフ・シュタイナーの「老化するお金」を研究していた。これらの考えは、お金のバブルな性質をなんとか無くそうとした試みだ。元々お金は魚や肉といった、腐るものと交換されていたものだった。しかしお金は腐らず、なんにでも交換でき、情報として高速でやり取りができる万能選手だ。

この万能さゆえに、人がお金を追い求めるようになるのは自明だが、それはお金が実体から切り離されているから起こっている現象であり、その結果、実体を見失うさまざまな弊害をエンデは指摘している。

物語に戻ってみれば、時間貯蓄銀行が「時間を預けて増やす」というのは嘘で、銀行が考えているのは時間を奪うことだけだ。というのは、今現在の時間こそが最も貴重なことだと時間貯蓄銀行の人は知っているからだ。今現在の時間とは、生命そのものであり、それはお金という情報ではなく、実体、存在そのものであるからだ。そのような貴重なものを安易にお金に変換してはいけないと、エンデは言っているが、それにつけても金の欲しさよ。

モモ (岩波少年文庫(127))
モモ (岩波少年文庫(127))
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