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「ブーケを7本集めれば、昇り龍が現れて好きな人と一緒になれる」

そんな書き込みを2chで見たゆかは、
もちろん信用しなかった。

しかし、ゆかはとんでもないものを見てしまった。

ある日、友人の結婚式に出席していたゆかは、
ブーケトスを目前にしていた。
ゆかは過去すでに2本のブーケをキャッチしており、
今回のブーケがとれれば3本目となる。

ふと空を見上げたゆかは驚愕した。
空のかなたに遠く飛んでいるもの、
そう、それはまさしく昇り龍だった。

そしてふと、過去のブーケトスを思い返したゆかは、
前にも空になにかが飛んでいたことを思い出した。
そう、昇り龍はブーケを受け取った回数をカウントしていたのだ。

ブーケトスがまさしく始まろうとしていた。
ゆかの目が光った。
ブーケが投げられた!
しかしゆかと離れた場所にブーケは飛んだ!

ふと気がつくとゆかのまわりには、
ブーケトスに一緒に参加していた友人たちが血だらけで倒れており、
ゆかの手には血まみれのブーケがしっかりと握られていた。

「なに考えてんのよ!」花嫁がゆかに叫んだ。
「全員を殴り倒してブーケを奪い取るなんて!」


ゆかは言った。
「どうしても勝たなくてはいけない時があるの。
たとえそれですべてを失ったとしても、
あの時なぜ遠慮したのかと、後悔しながら残りの人生を過ごしたくない」

ゆかの目に狂気を感じた花嫁と周囲は、
それ以上ゆかに何も言わなかった。
空には昇り龍がクルクルと回っていた。

「あと4本」
しかし、ゆかには今年結婚式に呼ばれる予定はなかった。
ゆかは、赤の他人の結婚式に乗り込むことにした。

「キャー!」「ウワー」
チャペルでは人々が目の前に繰り広げられる惨劇に絶叫していた。
血まみれのブーケは、ゆかの目の前にあった。

しかし、ゆかがブーケを取ろうとする直前に、誰かがそれを拾い上げた。
見上げるゆかの前に、知らない女性が立っていた。
彼女の左手にはブーケが握られていたが、
右手にはメリケンサックが装着されていた。

「あなたもブーケハンターなのね」

ゆかの目が遠くを見つめた。
それから2人は14分も戦っていた。
警察官がゆかを拿捕した時には、メリケンサックの女性は倒れており、
ゆかの手には血まみれのブーケが握られていた。
空中では昇り龍がはげしく上下運動をしていた。

これまでの4組の結婚式に乗り込み、
参列者をなぎ倒しながらブーケを奪取しつづけたゆかは、
極悪な危険人物として網走刑務所の独房に監禁された。

そこでゆかを担当する刑務官をみたとき、ゆかは驚愕した。
偶然にも彼は、ゆかが24歳のとき一度だけデートし、
それ以後合うことはなかった男性だったが、
ゆかが一番好きな人だったのだ。

時が過ぎ、ゆかは独房のなかで58歳の誕生日を迎えようとしていた。

「ゆか、誕生日おめでとう」
刑務官の彼はちいさな一切れのケーキを差し入れた。

ゆかは彼と過ごした30歳のときから58歳のいままで幸せだったし、
これからも幸せなんだろうと思うと、ニコッと微笑んだ。

網走刑務所の空の上を、昇り龍がクルクルとまわっていた。


おわり