情報流出事件で、過失者がけっこう高齢なのにWinnyを使っていて違和感があるときがあるけど、実際には下記のような流れで起きているようです。聞いたはなしをもとに物語調に構成してます。

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「君のパソコンから13万人の個人情報が流出して大騒ぎになっているぞ。どういう事だ?」
日曜日にのんびりと親子で釣りをしていた岸は、突然の上司からの電話に呆然としていた。

自分のはずはなかった。過去、多量の個人情報を扱ったプロジェクトを扱ったことはあるが、すでに2年前のことだ。しかも、上司によればファイル共有ソフト「Winny」経由で流出しているというが、彼はそのソフトを使ったことは無かった。なぜ私なのだ?

「お父さんどうしたの?」高校生の息子の声に我に返った岸は、「仕事でトラブルだ。すまんが家に帰るぞ」と、蒼白になりながら、あわてて釣り道具をクルマに乗せた。

もし自分が本当に流出させたのなら、ただごとじゃすまない。あのプロジェクトは、世界的なITベンダー・M社から委託された業務で、流出が事実なら全国的なニュースになるだろう。そして、彼の会社が莫大な損害賠償を請求されることも自明だった。

家についた岸は、自分の部屋のパソコンを起動した。このパソコンは、2年前に業務で使用したが、故障したのでデータを別のパソコンに移しかえ、それ以来自宅用に使っている。流出したとすれば、このパソコンに違いなかった。そして13万人の顧客ファイルが、消去されずにフォルダの奥底に存在しているのを見たとき、岸は眩暈がしてきた。

しかしWinnyを自分は使っていないはずだ、と思いインストールされたプログラムの一覧を見たとき、岸は目を疑った。そこには、Winnyがインストールされていた。一体誰が?

そのとき、隣から息子がかけた音楽が聞こえてきた。岸はハッとして、「恵二!」と息子の名前を読んだ。恵二はポカンとした表情で現れた。「お前、私のパソコンにWinnyを入れたか?」と単刀直入に岸は聞いた。恵二は悪びれない顔で「うん、欲しかった曲があったから」と答えた。恵二の入れたWinnyがウィルスに感染し、個人情報が漏れたのだった。

「それだけの為に…」岸は呻いた。
恵二は、自分がなにを引き起こしたのか、未だなんの自覚もなかった。